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目の前の楽譜を信じすぎちゃいけない! その5

ブラームスの間奏曲 作品117-2の楽譜について調べています。
かなりしつこいですね、私。


その4で触れていませんでしたが、ウィーン原典版(音楽之友社刊)の注解がこちらです。英語と日本語訳のページが1ページずつ↓
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刊行にあたり、自筆譜と初版楽譜、以上2つの資料を検証した、とあります。このウィーン原典版の楽譜の下に小さく、コピーライトが1973と書かれているので、おそらく1973年の出版なのでしょう。旧ヘンレ版とほぼ同時期です。

謎のf については、「自筆譜には書かれている」と説明があります。ウィーン原典版の楽譜にf は記譜されていないので、校訂者ハンス=クリスティアン・ミュラーさんは自筆譜よりも初版楽譜を尊重したわけです。
しかしこの注解では、どうして自筆譜よりも初版楽譜を尊重したのか、説明不十分ですよね。


ともかく。
前回ブログで書いたとおり、ヘンレ改定新版による詳細な注解により謎のf は無いものとして扱うべきということで解決しました。



f の謎は解明されましたが、ウィーン原典版とヘンレ改定新版、両方の注解を読んでいたら、ほかにも謎を見つけてしまいました。

それは、この作品の中間部の直前と直後に置かれているフェルマータです。合計5ヶ所。

自筆譜には書かれています。中間部直前のフェルマータです。↓
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しかし初版楽譜には記譜されていません。↓
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自筆譜にあって初版楽譜に無い。
謎のf と同じ状況。




手に入る限りの楽譜を調べてみると、

自筆譜、旧ヘンレ版、ウィーン原典版にはフェルマータあり

初版楽譜、ペータース版、ブライトコプフ&ヘルテル版、ヘンレ改定新版にはフェルマータなし

ということが分かりました。


旧ヘンレ版を使っていた私の場合、フェルマータが記譜されているので(旧ヘンレ版の校訂者スティークマンさんは、謎のf といい、このフェルマータといい、とにかく自筆譜を尊重する考えだったことが分かります)、各フェルマータでいったん音楽をとめてから次の音楽へ進むという解釈で弾いていました。
しかしフェルマータが無ければ、音楽を完全にとめずに次の部分に進むという弾き方が、ブラームスの真意により近いことになります。

フェルマータがあるのと無いのとで、演奏がかなり違ってきます!

謎のf の場合はそのフレーズだけの違いでしたが、5つのフェルマータは作品全体の構造に関わるものです。作品全体の解釈につながる重要な要素だと、私は思います。



こんな重要な記号が、楽譜によってあったりなかったり。
どうなってるの?


ますます、目の前の楽譜が信じられなくなってきました。。。





続きます。


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