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白昼夢④ ヴィヴァルディピアノ教室(前編)

2018年8月。猛暑の町です。 通行人はほとんどいません。
 
ふと、どこからかピアノの音がしてきます。
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みなみちゃんは小学二年生です。お父さんの転勤で東京から熊本に引っ越してきました。

前の町のピアノの先生はやさしい女のせんせーでしたから、みなみちゃんはぜんぜん練習しなくてダイジョブでした。ピアノの本はきれいなひょうしでかわいい絵がついていましたがみなみちゃんが好きなのはひょうしやがくふの中のさし絵だけでした。レッスン中、みなみちゃんはよくねむくなりました。きれいなさし絵を見ながらぼーっとちがうことばっかり考えていました。

新しいまちにもピアノ教室はたくさんあるようでした。おかあさんは近所の人に聞いたり、インターネットで調べたりしてさがしましたが、なかなかピンとこないようすでした。みなみちゃんはもしかしてもうピアノをならいに行かなくてすむかも…と、ちょっと期待しました。

ピアノ教室さがしにつかれてしまったおかあさんは、健軍神社での茅の輪くぐりの帰りにある看板が目にとまりました。「生徒募集 ヴィヴァルディピアノ教室 講師 庵 杜二夫(あん とにお)」
「こんなところにピアノ教室なんかあったかしら?男の先生なのね…。
でも家からとっても近いし、ここにしましょう。」

ごあいさつにうかがって、みなみちゃんはかたまってしまいました。先生は背が高くガリガリにやせていて、ウェーブした赤い髪を肩のところまでのばしています。やさしそうにほほえんでいますが、目のおくのほうにするどいこわいものがキラッと光った気がしました。「やあ、よろしく。」先生が手をさし出したので、みなみちゃんはあくしゅしました。手をふれたその時、ビビビッとデンリュウが走りました。頭がいっしゅんクラッとしましたが、なぜかいつもよりクリアな感じもします。

ほかにはなにも変わったことはなかったのでその日はそのままおうちに帰りました。

1回目のレッスンはハノンというつまらなそうな曲でした。先生はいきなりいちばんさいごの60番を弾けといいます。そんなの見たこともないのでいやだなーと思いながらみなみちゃんはけんばんに手をおきました。ところがなんということでしょう。ゆびはさっとトレモロの体勢を形作るとすさまじいいきおいでかってに弾き始めました。テンポは最高速度設定の120どころか150くらいあります。あっという間に弾き終え、うではちっともつかれていません。むしろすごいスピードで弾いた快感だけが残って、もっともっと弾いていたい感じです。

先生はおもむろに何やらむずかしそうな楽譜を持ってきました。The Four Seasonsという文字が読めます。

「これは私がピアノ用に編曲したものだ。きみに弾かせてあげよう。」

みなみちゃんはThe Four Seasonsがなんだかわからず楽譜を持って帰りました。

おうちに帰るとみなみちゃんはまずThe Four Seasonsをゆーちゅーぶで聴いてみました。

みなみちゃんのからだにセンリツが走りました。聞き覚えがあるのは1曲目だけでしたが、聴き進むうちにえたいのしれないほのおがからだのおくからもえてくるのを感じました。

後編へ続く…

※白昼夢はフィクションです
















































































































































































































































































































































































































































































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