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音楽を聴くということについて思う

好きな曲は何ですか?
ジャンルは?
好きな作曲家やアーティストはいますか?

 心惹かれる曲は何十回でも何百回でも聴いていたいですね。音楽は何度聴いても擦り減りません。今やどこで何を聴くのも自由です。しかし、こうも簡単に好きな音楽が当たり前のように聴ける時代が来るとは、ほんの数十年前でも予測できなかったことです。

 さて、ここに、音楽の聴き方にこのような言葉を投げかける方がおられます。

“朝から晩まで聴くのはよくない
短い時間に、慎重に、心静かに
手軽に聴けるだけに、濫聴に陥る。心静かに古今の名曲を味わって、魂のよき糧とも、日常生活の慰安ともしたいものである。”

 生涯に一万枚以上のクラシックのレコードを収集した作家、野村あらえびす(1882-1963)の言葉です。当時は蓄音機とレコードができたばかりの時代です。
“何でも、人の声や、いろいろの音楽を吹き込んで、数十年でも保存の出来る器械が発明されたそうだ。”と、蓄音機を持っている人の家に集まって、正座して、やっと手に入れたレコードに針を落とすことになるわけです。当時は「レコードコンサート」というイベントがあり、ひとつのレコードをたくさんの人が一堂に会し息をのんで聴き入ったといいます。そこには小さな子供たちも集まりました。いろいろな人が来ている会場は、最初は場の空気に統一感がなくなんとなくざわざわしているのですが、ベートーヴェンの交響曲第五番では曲が進むにつれ全員がぐいぐい引き込まれ、最後は場内が音楽の魅力で静まり返ったそうです。

 レコードがCDやインターネットと違うところは、何回も聴くと擦り切れるというところです。
“擦り切れるから、好きな曲ほどしょっちゅう聴くわけにはいかない。
好きでたまらないレコードは、その摩滅を怖れて、案外めったにいかけない。”
と彼は言います。レコードは一回一回の視聴が命がけ。それなのに先のように濫聴に陥るな、と音楽に対する自分の姿勢を戒める念の入れようです。インターネットが普及した現代社会を見たら、きっと心臓が止まるに違いありません。

 そんな野村あらえびすには瓊子(けいこ)さんという娘さんがいました。瓊子さんは、当時有名だったジュリア・クルプというオランダの歌手が歌うシューベルトの「野薔薇」のレコードがお気に入りだったのですが、“昭和の家長”である父親の大切なコレクションであるクラシックのレコードを貸してとは、おいそれと言えません。また借りたとしても擦り切れるのが気になる父親が「あんまり何度も聴くなよ。」と繰り返し釘をさすもので、瓊子さんもさすがにそうしょっちゅう貸してとも言えなかったそうです。

 瓊子さんは嫁ぎますが、数年後病気で亡くなってしまいます。あらえびすは、嫁入り道具に「野薔薇」のレコードを持たせてやらなかったことを後悔します。

 音楽が“レコード”という形を成して、大切にケースに入れられ珍重された時代…。
音楽としての重みは当時も今も同じなのに、その一回の視聴に懸ける想いの強さたるや、濫聴に陥っている現代人の私とは比べものになりません。




































































































































































































































































































































































































































































































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