モーツァルトが可愛がったムクドリ
朝、ウグイスの鳴き声が聞こえました。よく聴いていると個体別に微妙に鳴き方が違います。「ほけきょおおお~~」(俺様はいい男だぞ~~)とドヤ鳴くのがいたり、「ホケキョッ!」(付き合おョ!)とキュートに鳴くのもいたりして面白いです。鳩も庭の木に頻繁にやって来て、巣を作ろうと様子をうかがっているようです。
モーツァルトはムクドリを飼っていました。名前はシュタール。九官鳥と同じで、聞こえるものの真似をする性質があり、彼のメロディーを覚えて歌ったと言われています。(すでに店で彼のメロディーを歌っていたので買ってきたという説もあります)
この出来事は、ピアノ協奏曲第17番第3楽章の着想のもとになりました。
曲の冒頭は、鳥が歌ったことを確信したくなるような、素直で本当にかわいらしくキラキラしたメロディーで始まります。所々絶妙に付いている装飾音符からは、透き通った愛がたくさんこぼれてきます。歌劇「魔笛」のパパゲーノのアリア“俺は鳥刺し”(鳥を捕まえる時みたいに可愛い娘を捕まえる網があったらいいのにな!という歌詞の曲)に少し似ていて思わず笑顔になります。
木管楽器が次々と交代で登場して来ると、まるで森の動物たちが入れ替わりで現れて楽しく踊っているようです。360度どこを見ても空の一番上から土の中まで生き物の息吹であふれかえっています。
短調になると柔らかく響くピアノの音。深く優しい愛で痛みを包み込んで癒してくれるようです。
一転して再現する長調は生命の喜びへと急発進。身体も心も自然と動いていきます。ピアノのトリルはまるで鳥のさえずりのよう。それを受けてオケが楽しく踊りだし、木管とピアノは競争しながら容赦のないテンポアップに突入。命の輝きを世界中に高らかに宣言して曲を閉じます。
聴き終わって目を閉じると、モーツァルトとムクドリが織りなすワクワク感に包まれます。彼の作品はいつも人間や生きるものたちへの愛で満たされていますが、それと共に、死が身近だったこの時代に、彼がこの鳥を暮らしの中の潤いとしてだけでなく大切な命として愛しんでいた様子が浮かんできます。
今年も花が咲いて鳥が鳴き、季節は巡っていきます。近くの小学校から春風に乗って聞こえてくる子供たちの遊ぶ声や、春を喜ぶ鳥たちの歌は地球の宝物です。そしてこの平和な日常とその笑顔は、命の輝くモーツァルトの音楽そのものです。
熊本市東区健軍
HEART PIANO ハートピアノ教室
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