私の好きな曲⑨　蟹のカノン「J.S. Bach - Crab Canon 」

カノンの語源は「規則」を意味するギリシア語の「カノーン」。 カノンとは模倣による対位法によって書かれた曲のことで「かえるのうた」のような追いかけっこです。 カノンと言えばパッヘルベルのカノンが有名ですね。

　メロディーの模倣の形にはいくつかの種類があります。
①平行カノン…最初のメロディーをそのまま模倣します。
②反行カノン…最初のメロディーを上下ひっくりかえして模倣します。
③逆行カノン…最初のメロディーを末尾から逆に模倣します。蟹のカノン
④拡大･縮小カノン…最初のメロディーの音符の長さを拡大したり縮小したりして模倣します。 　

蟹のカノンは③逆行カノンです。楽譜を見ると分かりますが、最初から演奏したものと終わりから演奏したものを同時に演奏してちゃんとした曲になるようにできています。各旋律が左右から進行していくところから蟹行カノンとも呼ばれます。

　透かして見える横長一段の楽譜があると仮定して、表と裏からぐるぐるまわりながら演奏すれば蟹のように横歩きでエンドレスに演奏できるというわけです。


　

　プロイセンのフリードリッヒ大王から即興演奏のために与えられた主題に基づいて作曲されました。「音楽の捧げもの　BWV.1079」の３曲目になります。構造のおもしろさとは裏腹に、はかなげな感で、遠い記憶を呼び覚ますような、幸せだった頃を懐かしむような、そんな旋律です。 　

　バッハの曲はどんなに小さい曲でも舞曲でも敬虔な感じがします。それは彼が深い信仰を持っていたからです。

　初心者のピアノのレッスンで嫌われがちなバッハも、こんな作品を聴いておいてから入っていくと案外すんなりと魅力が分かるかもしれません。
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