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目の前の楽譜を信じすぎちゃいけない! その1

今、ブラームス〈3つの間奏曲 作品117〉から第2番を練習しています。

東京で8月に開催されるコンサートで弾くためです。
無事に開催されるといいな。。。
また日が近くなったらこのブログでお知らせします。

さて、私が使っている楽譜はこちらのヘンレ版。【ブラームスのピアノ作品集】として30曲が収録されています。いわゆる原典版です↓
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この楽譜のなかで、どうにも納得できない記譜がありました。
それがこちら↓
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クレシェンドの行き先がf(フォルテ=大きく)ですが、その直後にはp(ピアノ=小さく)と書いてあります。

ブラームスはこれまでに結構弾いてきたけど、彼の楽譜はすべて理路整然としていて演奏者が納得いくように書かれていると、私は思っています。

上記のようにダイナミクスがすぐに変化する場合は、ただpと書くのではなく、subito p (すぐに小さくする)という指示を書いたはずと思うのです。

だけど、fとpがただ並んで書かれているだけ。
なんか、変な感じだなぁ。。。

原典版の楽譜だから、間違いないはず。

と信じていました。

ですが念のため、調べてみることにしました。


いつものペトルッチ音楽ライブラリーに、ジムロック社から1892年に出版された初版の楽譜がありました。


あら?
このfがない!


こちらが初版の楽譜の当該部分です。
fがない!↓
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そして、同じくペトルッチ音楽ライブラリーにあるペータース版とブライトコプフ&ヘルテル版(ブラームス全集)の楽譜にも、このfがありませんでした。

ということは、原典版のはずだけどヘンレ版が間違っているの?





いいえ、ここで単なる間違いとして結論づけるのは早いのです。

まず見てみなきゃいけないのが、ヘンレ版の楽譜の始めに書かれている【注解】です。それがこちら↓
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同じ内容が独英仏語で書かれています。
ヘンレ版は輸入楽譜で、日本語版は無いのです。。。

楽譜の校訂にあたっては、〈自筆譜〉、〈自筆譜の写譜〉、〈初版楽譜〉、そして〈ブラームス自身が鉛筆で加筆訂正した初版楽譜〉が現存しており、以上4つの資料を分析した、と書かれています。

残念ながら、このfについての記述はありませんでした。




では、いよいよ、ヘンレ版の単なるミスなのか?




いえ、まだ結論づけるのは早いのです。
一つの可能性が考えられます。

自筆譜にはこのfが書かれていたが、何らかの理由により初版には書かれていない。

という可能性です。

そしてヘンレ版の校訂者(モニカ・シュティーグマンさん)が、初版楽譜より自筆譜の記譜を尊重した、という可能性です。
そしてペータース版とブライトコプフ&ヘルテル版の校訂者は、自筆譜より初版楽譜の記譜を尊重した、という事になります。

でも、もしそうなら、本来ならシュティーグマンさんはその事を注解に書かなきゃいけないんだよね。
それが無いから、【単なるミス】の可能性が高まる!!


ところで肝心の自筆譜は、ペトルッチ音楽ライブラリーにはありませんでした。
調べたところ、ウィーン楽友協会所蔵だそうで、オンラインでは公開されていないようです。




肝心の自筆譜をこの目で見られない

そして

ヘンレ版の注解に何も書かれていない



fの謎は、深まるばかりです。



続きます!


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