年長さんのあたたかい涙
今年の春からピアノをはじめた年長さんの男の子。
背が大きくがっちりして、象のような可愛い目で、いつも髪がばしっと短く
(短いとこだと5ミリくらい)、多くを語る方ではないけれど、
一度スイッチが入ったときの話は熱くてひきこまれます。
カブトムシのえさのゼリーの話とか。
彼がこの春「続くかどうかわからないけど、なんとなく体験だけ…」と、
言葉以上にあたたかなお母様と一緒に、
固い表情で体験レッスンに来られてから、半年あまりがたちました。
男の子はお母様と、何というかとても良い関係。
木曜日はうちでピアノの日、と取り決めをしたのを守って練習を重ね、
ぐんぐん上手になっています。
ほぼ半年で一冊目の教本が終わり、先日ミニ発表会をがんばりました。
(ミニ発表会は、修了した教本の中から好きな1曲を自分で選び、
1週間おひろめのための練習をし、レッスン室でご家族の拍手の中で
弾くというものです)。
そんな彼のある日のレッスンで、忘れられないことがありました。
真剣に弾いていた曲が何度もつっかえてしまい、
励ましながら進めるも、一音でも違えてしまうと納得がいかず、
彼も半ば意地になって、つっかえて最初に戻る、を繰り返すようになります。
彼はレッスンの最後の5分だけ、お母様に聴いてもらうのが習慣ですが、
(レッスンは保護者の方の同伴は自由です)
繰り返しが続くうちに、お母様がレッスン室に入ってきました。
でも、弾けない。
お母さんも聴いてくれているのに、もう少しで完璧に弾けるのに、
のところまで行ってもつっかえた何度目かの瞬間、
突然彼は、わあっと叫んで床に寝転び、号泣を始めました。
赤ちゃんが何か発散するように、仰向けになって、躊躇なく容赦なく、
うわあーっと。
あまりの勢いで、私も(大丈夫ー!?)と駆け寄ろうとしましたが、
その前に、お母様はただ彼の頭を撫でて、
よしよし、くやしいんだね
と、この上なく穏やかに言いました。
ピアノが(彼の思うように)うまく弾けないのが悔しくて
ストレートに泣いて涙を流す彼と、
いつも落ち着いて包み込んでくれるお母様。
なんだか、あまりのまっすぐさとあたたかさに、私が泣きたくなりました。
涙は、癒しであり、精神の解放です。
音楽も、レッスンも、そうでありたいなと思いました。
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2012年11月2日
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