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適正な競争心とは何か②

 前回、ゆとり教育路線が与えた一般教育界や社会への悪影響、間違った平等観などについて意見を述べさせていただきましたが、今回はいよいよ私達の関係する音楽教育界への影響が、どのような形で現れてきたかを検証してみたいと思います。

 ゆとり教育の本格的な始動と、時期を同じくしてスタートした生涯学習目的のイベントに、「ピティ○ピアノステッ○」というのがあります。ゆとり教育と同じく、当時文部科学省大臣官房審議官(生涯学習政策担当)などの立場にあった寺脇研氏の旗振りによって始まったイベントですが、この日本最大のピアノ指導者団体が主催するイベントは、現在では正反対の性質を持つコンペティションと同じく、毎年何万人もの参加者を集め、非常に発展しているかのように見えます。
 確かピアノ学習の段階を、23段階に分類し、それぞれのレベルに合った課題曲が設定されており、受験者は自分にあったレベルの段階から課題曲と自由曲を組み合わせて演奏し、アドバイザーから合否判定と講評をもらうというものです。
 段階ごとの年齢制限は、コンペとは違い存在しないので、1段づつ自分のペースで生涯学習として取り組んで登っていけるという、理念としては大変素晴らしいものです。
 この基本形以外には、合否判定はせず、自由な演奏の場を提供してくれるフリーステージや、様々なアレンジ形態が工夫されていますが、細かくなりますので、取り敢えず今回それらは横に置いておきたいと思います。

 評価の仕方は、5段階評価になっています。一番いいのがS評価で、以下A、B、C、と続き、ここまでが合格です。D評価は不合格で再チャレンジとなります。
 そこで受験者は少しでも良い評価で合格したいと頑張るわけですが、C合格でも合格は合格で、余程真面目な受験者でもない限り、同じ段階をもう一度良い成績を取るために受け直すということは稀で、普通は次回の受験時には次の段階に進んでいることがほとんどです。
 ただこのC合格のレベルで、次の段階の曲に取り組んで問題が生じないのであれば良いのですが、もしその段階に留まってもう少し努力を続けたほうが、先々受験者にとって良いと判断される場合には敢えて不合格とし、再チャレンジしていただくほうが、本当は親切なのではないかと私は感じます。

 実態を申し上げましょう。私は以前この運営にもアドバイザー業務にも両方携わっておりましたので、発言の資格があると思いますが、D評価、つまり不合格とする判断基準は「音楽として成立していない演奏、完奏していない演奏」となっています。つまりそれに該当しなければ、どんなに問題があろうとも合格なのです。
 実際に私が経験した例を紹介しますと、例え10回以上演奏が止まったとしても、完奏している限り合格でしたし、ひどいのになると、舞台袖からいつまでたってもごねて出て来ず、結局本番をエスケープしたにもかかわらず、チーフアドバイザーの温情で、休憩時間にお客様が聴いていない時、言いなだめてこっそり演奏させ合格? という得体のしれない対応も経験しました。
 いくらなんでも、これは特殊な例であろうと思っていたのですが、他の地区でも同様な経験を何度かしましたので、このイベント全体を支配している方針・理念が何かあるのだろうと感じました。

 実際には、不合格者は原則出さないという前提が最初にあるのです。これは受験者に対して一見親切なようにも感じられますが、私は真面目に生涯学習に取り組んでいる方々に対し失礼ではないかと思います。私なら10回止まって合格証を渡されたら、二度と信用しませんし、逆に惨めな気持ちになります。失敗してそうなったのであれば、もう一度頑張れば、それで良いのではないでしょうか。

 「天国へ至る道は険しく、その門は狭いが、地獄への道は善意で舗装されている。」という言葉をみなさんは耳にしたことがありますでしょうか。指導者であるならば、生徒達を耳障りの良い言葉で堕落する方向へ導くのではなく、仮に歩みは遅くても、向上する方向へ導かなくてはなりません。生涯学習をうたうなら尚更、ピアノの技術向上だけではなく、ピアノを通した心の向上、人格の向上という視点を忘れてはなりません。なぜなら人生の大きな目的の一つに魂の修行という観点があると私は信じているからであります。

 今回は、少し際どい発言になったかもしれません。ただこのシステム・理念自体は、とても良く練られ優れたものだと私も思うので、受験者達が良識ある方針のもとに育まれていけば、素晴らしい成長の機会とすることが出来るのではないかと感じます。
 くり返し述べますが、チャンスは平等に、努力の結果は公平に評価されるのが本来のあり方ではないでしょうか。 つづく。


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