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【紫明先生のエッセイシリーズ】歩ちゃんのこと(1991年)4

その頃には、どの曲もドレミ唱法ができていますから、
ピアノに向かえば気軽に弾けるので、
楽しくてどんどん一人で曲を覚えていきます。

歩ちゃんは普段はおとなしいのですが、
気性の激しい一面もあって、
一度こじれると大声で泣き出し、
誰が何と言ってなだめても、
どうにもならない始末で、

お母さんが「先生どうも申し訳ございません」とおっしゃって、
連れてお帰りになる事が何度かありました。

そんなときは私も心得たもので
「次のチャンスを待ちましょう」と申し上げますと、
懲りずに一度も休まずに通って来られました。

そのお母さんの揺るぎない態度が、
いつしか歩ちゃんの中に確固たるものを築いていったのでしょう。

一年もすれば、鋭い集中力が養われ、
目覚ましい進歩が見られるようになりました。


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