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暗譜 vs 視奏

「暗譜が苦手なんです。」という相談を受けることがあります。

「暗譜まで出来てこそ、弾けたということになるのでしょうか?」と、真剣な顔つきでお尋ねになられる成人の生徒さんが、教室にお見えになることもあります。

暗譜まで持って行くためには、多くの時間と努力が注ぎ込まれますし、その曲への習熟度も高まりますからその価値は大きいと思います。

しかし、それは本当に、絶対不可欠なものでしょうか?

「暗譜」の起源に遡って考察してみましょう。

独奏では譜面を立てないで演奏するという習慣が、いつ始まったかご存知ですか?

クララ・シューマンというピアニスト(作曲家ロベルト・シューマンの奥さん)こそが、独奏曲を暗譜で弾くことを創始した人なのです。

当時は、「譜面を立てて演奏する行為は作曲家に対する敬意である」という考え方が当たり前でした。

ですから、譜面を立てないで演奏する彼女のスタイルは、人々の大きな反感を買い、音楽家たちの間では批判が巻き起こりました。

「ピアニスト」という職業の地位は確立されておらず、著しく向上してはいたものの、まだ途上にある段階にありました。

そうした時代背景から、ピアニストは「作曲家の従僕である」という位置づけに甘んじるより他なかったのです。

クララ・シューマンによる「暗譜による演奏」という新しいスタイルは、音楽界の常識を覆すような行為であったと同時に、「作曲家からの独立」「ピアニストの地位と権利の主張」といった社会運動的な意味を持っています。

伝統を重んじる当時のピアニストの多くは、彼女のやり方には従わなかったそうです。「作曲家の僕たること」「慣例に従うことの正当性」に誇りと信念を持っていたからでしょう。

しかし、後世のピアニストたちがクララのやり方に従ったことは、音楽史を振り返る中で、非常に興味深いことです。

今や、「暗譜してこそ初めて曲が完成した」と主張する先生方も大勢いらっしゃる時代になりました。

この問題について、どちらが正しいとする意見を述べることは、ここでは差し控えたいと思います。

大事なのは、私たちもまた、時代の常識に知らず知らずのうちに染まっている者であることを知ることです。

クララ以前の伝統的演奏スタイルの真意を理解した上で、彼女が提起した新しい時代の作り上げた習慣に賛同するのであれば、「暗譜」は意味あるものとなるでしょう。

目の前に譜面があってもなくても、常に新鮮な気持ちで、楽しくピアノを演奏して下さいね!


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