オーケストラ音楽をピアノで弾くことはソロ演奏にも役に立つ! その2〜隠れた多声音楽を見つけ出す〜
前々回と前回からの続きです。
前々回のブログで、オーケストラ音楽をピアノで弾くという経験がピアノソロの勉強にとてもとても有益だと思います。と、書きました。
さて、何が有益なのでしょうか?
というわけで、前回は連続する和音をどう弾くかに焦点を当てて書いてみました。
さて今回はその2として、隠れた多声音楽を見つけだすことに注目してみたいと思います。再び長くて専門的な記事になります。どうぞご了承ください。
このブログでは文章だけなので分かりにくいかもしれませんが、私のアメーバブログでは譜例を用いて説明しています。 よろしければこのページ右側のリンクからブログへお越し下さいね。
では前回同様、メンデルスゾーンによるピアノソロの名曲、ロンド・カプリチョーソ作品14(以下ロンカプ)を見ていきます。
比較として今回はチャイコフスキーのヴァイオリンコンチェルト第3楽章(以下チャイコン)を取り上げて考えていきたいと思います。
有益なこと その2
「隠れた多声音楽を見つけだす」
例えば、ロンカプのPresto(速く)の開始部分。
この部分について、「旋律は一番上の音の連なり(ミレミ シ ド シ ソ ラ ソ ミ ファ ミ シ)で、それ以外の音は伴奏」と考えて(=聞こえて)いるなら、ちょっと待って!
この部分が多声音楽になっていること、分かりますか?
多声音楽、つまり対位法的な書法を理解して弾くことはピアノ弾きにとって避けられないことです。バッハに代表されるバロック音楽はもちろんですが、頻度は減るものの古典から近現代まで広範囲の作品に言えることだと思います。そしてポップスのアレンジなどでも、対位法的な書き方が出てきます。
対位法的な書法はオーケストラ音楽にも出てきます。チャイコンのオーケストラ部分にも、出てくるのです。詳しく見ていきましょう。
ロンカプによく似た「隠れた多声音楽」がチャイコンのピアノ譜に出てきます。それが第3楽章、第9小節からの4小節です。ここ弾くの、けっこう難しいんです。ロンカプにも負けないくらい。速いテンポで音が跳躍するし、臨時記号が多いし、難しい。
同じところを総譜で見て分かることは、あるリズムパターンを違う楽器が時間差(1小節の差)で追いかけっこのように演奏していることです。
このようなリズムパターンを音楽用語では動機とよび、動機が連続して現れることを反復進行とよびます。
チャイコンの該当部分では、
①フルート&オーボエ
②クラリネット&ファゴット
③ヴァイオリン&ヴィオラ
④チェロとコントラバス
の順で動機が現れます。つまり動機が4回。反復進行ですね。
そしてこの動機は2小節ありますが、1小節ごとに現れて反復進行します。つまり動機が終わりきらないうちに次の動機が現れるので、まさに「隠れた多声音楽」となっています。高度で複雑な多声音楽ではありませんが、これも対位法的な書法と言えます。
もう一度、該当部分のピアノ譜を見てみましょう。
動機が重なりながら1小節ごとに追いかけっこしてるの、見えてきたかな?
オーケストラでは楽器ごとに音色の違いがあるので、動機の重なり合いをはっきりと聞き取ることが出来ます。これをピアノで代用するわけです。音色の違いは残念ながら再現できません。しかしながら、動機の重なり合いを理解して、意識して弾くことで、演奏に説得力が増します。
それではもう一度、ロンカプのPresto(速く)の開始部分を見てみます。
チャイコンの動機は楽器ごとに違う音高で現れていました。
(最初の動機はラから始まり、2つ目の動機はソ#から始まる、など)
一方、ロンカプの動機は同じ音高で現れます。(オクターブの違いはありますが。)
ロンカプのPresto(速く)の開始部分は、この動機が重なり合っているのです。
左手の最後も動機の一部分ですね。
隠れた多声音楽が見えて(=聞こえて)きましたか?
先ほどのチャイコンの一部分と同じように、動機の重なり合いを理解して、意識して弾きたいものです。
確実に、よりよい演奏になります!
そしてこの方が断然、面白い!
さて、またもや長い記事になってしまいました。ここまで読んで下さった方、ありがとうございます。
今回は結局何が言いたかったのか、まとめ。
オケでは楽器ごとに現れる動機の反復進行。音色の違いによって多声音楽がはっきりと聞き取れます。同じ音楽をピアノ一台で弾いたら音色の違いは再現できません。しかしながら、多声音楽(対位法的な書法)を理解して、意識して弾くことで、その演奏は作曲家の意図にずっと近づくことが出来ます。
対位法的な書法への意識。
ピアノソロ曲の演奏に応用するべきです。
さて、オーケストラ音楽をピアノで弾くことはソロ演奏にも役に立つ!のシリーズ。前回は「連続する和音をどう弾くか」、今回は「隠れた多声音楽を見つけだす」に焦点を当てました。
また次は違うポイントに注目してみたいと思います。
前々回のブログで、オーケストラ音楽をピアノで弾くという経験がピアノソロの勉強にとてもとても有益だと思います。と、書きました。
さて、何が有益なのでしょうか?
というわけで、前回は連続する和音をどう弾くかに焦点を当てて書いてみました。
さて今回はその2として、隠れた多声音楽を見つけだすことに注目してみたいと思います。再び長くて専門的な記事になります。どうぞご了承ください。
このブログでは文章だけなので分かりにくいかもしれませんが、私のアメーバブログでは譜例を用いて説明しています。 よろしければこのページ右側のリンクからブログへお越し下さいね。
では前回同様、メンデルスゾーンによるピアノソロの名曲、ロンド・カプリチョーソ作品14(以下ロンカプ)を見ていきます。
比較として今回はチャイコフスキーのヴァイオリンコンチェルト第3楽章(以下チャイコン)を取り上げて考えていきたいと思います。
有益なこと その2
「隠れた多声音楽を見つけだす」
例えば、ロンカプのPresto(速く)の開始部分。
この部分について、「旋律は一番上の音の連なり(ミレミ シ ド シ ソ ラ ソ ミ ファ ミ シ)で、それ以外の音は伴奏」と考えて(=聞こえて)いるなら、ちょっと待って!
この部分が多声音楽になっていること、分かりますか?
多声音楽、つまり対位法的な書法を理解して弾くことはピアノ弾きにとって避けられないことです。バッハに代表されるバロック音楽はもちろんですが、頻度は減るものの古典から近現代まで広範囲の作品に言えることだと思います。そしてポップスのアレンジなどでも、対位法的な書き方が出てきます。
対位法的な書法はオーケストラ音楽にも出てきます。チャイコンのオーケストラ部分にも、出てくるのです。詳しく見ていきましょう。
ロンカプによく似た「隠れた多声音楽」がチャイコンのピアノ譜に出てきます。それが第3楽章、第9小節からの4小節です。ここ弾くの、けっこう難しいんです。ロンカプにも負けないくらい。速いテンポで音が跳躍するし、臨時記号が多いし、難しい。
同じところを総譜で見て分かることは、あるリズムパターンを違う楽器が時間差(1小節の差)で追いかけっこのように演奏していることです。
このようなリズムパターンを音楽用語では動機とよび、動機が連続して現れることを反復進行とよびます。
チャイコンの該当部分では、
①フルート&オーボエ
②クラリネット&ファゴット
③ヴァイオリン&ヴィオラ
④チェロとコントラバス
の順で動機が現れます。つまり動機が4回。反復進行ですね。
そしてこの動機は2小節ありますが、1小節ごとに現れて反復進行します。つまり動機が終わりきらないうちに次の動機が現れるので、まさに「隠れた多声音楽」となっています。高度で複雑な多声音楽ではありませんが、これも対位法的な書法と言えます。
もう一度、該当部分のピアノ譜を見てみましょう。
動機が重なりながら1小節ごとに追いかけっこしてるの、見えてきたかな?
オーケストラでは楽器ごとに音色の違いがあるので、動機の重なり合いをはっきりと聞き取ることが出来ます。これをピアノで代用するわけです。音色の違いは残念ながら再現できません。しかしながら、動機の重なり合いを理解して、意識して弾くことで、演奏に説得力が増します。
それではもう一度、ロンカプのPresto(速く)の開始部分を見てみます。
チャイコンの動機は楽器ごとに違う音高で現れていました。
(最初の動機はラから始まり、2つ目の動機はソ#から始まる、など)
一方、ロンカプの動機は同じ音高で現れます。(オクターブの違いはありますが。)
ロンカプのPresto(速く)の開始部分は、この動機が重なり合っているのです。
左手の最後も動機の一部分ですね。
隠れた多声音楽が見えて(=聞こえて)きましたか?
先ほどのチャイコンの一部分と同じように、動機の重なり合いを理解して、意識して弾きたいものです。
確実に、よりよい演奏になります!
そしてこの方が断然、面白い!
さて、またもや長い記事になってしまいました。ここまで読んで下さった方、ありがとうございます。
今回は結局何が言いたかったのか、まとめ。
オケでは楽器ごとに現れる動機の反復進行。音色の違いによって多声音楽がはっきりと聞き取れます。同じ音楽をピアノ一台で弾いたら音色の違いは再現できません。しかしながら、多声音楽(対位法的な書法)を理解して、意識して弾くことで、その演奏は作曲家の意図にずっと近づくことが出来ます。
対位法的な書法への意識。
ピアノソロ曲の演奏に応用するべきです。
さて、オーケストラ音楽をピアノで弾くことはソロ演奏にも役に立つ!のシリーズ。前回は「連続する和音をどう弾くか」、今回は「隠れた多声音楽を見つけだす」に焦点を当てました。
また次は違うポイントに注目してみたいと思います。
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